初秋に出会った「ヒロ・ヤマガタ」|杉並区南阿佐ヶ谷にてリトグラフの買取
広く、良く整理された玄関に掛けられた大きさ10号くらいの額に、晴天に彩られた雄大な山の写真に思わず目を奪われました。
「福島の会津磐梯山なんですよ」
遠い記憶の引き出しから、若いころ友人と一緒に登った記憶がフラッシュバックで蘇りました。あまり良い記憶でなく、足を引きずりながら登ったあの頃(笑)
「亡くなった主人の実家が、福島なんです」
杉並区南阿佐ヶ谷でのご依頼
今日は、9月に入ってすぐお電話を頂いた、南阿佐ヶ谷にお住いのS様宅にお邪魔しました。地下鉄丸ノ内線の「南阿佐ヶ谷駅」から程なくにある閑静な住宅地です。
恐らく築30年は過ぎているであろう立派な木造住宅。
庭にはお手入れが行き届いた植栽が、元気に葉を広げてました。
紅葉前の紅葉かなんかでしょうか。
私の好きなロケーションのひとつです。
随分と長く付き合っている我が愛車を停めて、ドアから降りると石垣の塀にトンボが2匹。
そういえば、ここ最近は夏の暑さから、秋の雰囲気に様変わりした気がします。
時間が経つのは早いものです。
インターフォン越しに奥様の声。
落ち着いた、それでいて愛嬌のある声に誘われて、ご自宅へご案内頂きました。
「どうぞお上がりになって。」
中は現代の叡智を駆使した、バリアフリーが行き届いてます。花柄のスリッパに替えると、テーブルの上には一杯の冷たい緑茶が私が待っててくれました。
有りがたい事です。
ヒロ・ヤマガタとの出会い
アンティークの箪笥は丁重にお断り致しました。着物はタンス一棹から、大島、単衣など、約10着ほど、頂きました。
そして、床の間には古い額に入ってある絵がふたつほど、ひっそりとこちらを見てました。亡くなった旦那さまが、まだ働き盛りのころ、美術好きの友人から購入して大切にしてた物だそうです。
「お父さんの趣味のものだったんだけど、特に場所も取らないんでそのままにしてたんです」
最近ではそんなに売れる物では無いと思ってたそうです。
然し、よく見るとひとつは「ヒロ・ヤマガタ」のリトグラフでした。
ヒロのシルクスクリーン技法を用いた、鮮やかな色で描かれた色合いの絵が、異国にでもいったかのような錯覚を覚えさせます。
日本ではこのような、カラフルな色使いの版画があまりにも有名なんですけど、世界のヒロヤマガタとしては、レーザーやホログラムを使った作品の方が評価が高いんです。
「この絵を見て、お父さんいろんな場所に行きたがってたんです」
旦那様は、生前、足が少し不自由だったそうでどこに行くにも制限があったとのこと。昔TBSかなんかで放送されてた「世界遺産」という番組や、その他旅行関連のテレビが好きだったんだそうです。
奮発して、私なりの高額査定
ちなみにこの「ヒロ・ヤマガタ」の作品、一時かなり高価で取引されました。誰でも欲しがりました。
値段によっては、この思い出の詰まった絵を手放しても良いというお話。
先ほど見た会津磐梯山の広大なカットを思いながら、私も目いっぱい、心を広く、奮発してみました。
帰り際の玄関前で奥様の柔和な笑顔、そして「ちょっと雰囲気の飲まれたかな(笑)」という私の心に一抹の不安。
何故か今日、ここで出会ったヒロ・ヤマガタは何を意味してるんでしょうか?もしかするとたまには仕事を休んで、思い切って旅行でも行ってみたら、なんておてんとさんが言ってるのかもしれません。
すぐにはいけなかもしれないので、今日は行きつけの銭湯でも行って富士山でも眺めて一息つこうと思います。
そんな初秋の1日でした。