【東京都豊島区】陶磁器・焼物の出張買取事例|備前の宝瓶と人間国宝・井上萬二の酒器を丁寧に査定
目次
【東京都豊島区南長崎】年の瀬に託された器たち
―内装屋の親方から頼まれた、備前と人間国宝・井上萬二の酒器―
年の暮れも押し詰まった頃でした。
電話口の声で、私はすぐに誰だか分かりました。
「木村ちゃん、今年もお世話になります。ちょっと見てほしい物があってねぇ…」
長年付き合いのある、豊島区南長崎の内装屋の親方。
もうかれこれ二十年以上でしょうか。
現場で出た古い物、施主さんから譲られた品、そのたびに「これ、どうだい?」と声を掛けてくれる人です。
「年末でね、少し整理したいんだよ。大事にしてきた物だから、捨てるのは忍びなくてさ」
そう言われて、私はいつもの鞄を持ち、
南長崎へ向かいました。
数はあるけど値段がつけづらい陶磁器・焼物
現場というより、親方の倉庫の一角。
木箱がいくつも積まれ、その脇には使い込まれた焼物や酒器。
「若い頃から、仕事の合間に集めてきたんだ。現場の親方からもらったり、骨董市で見つけたりね」
そう言いながら、
一つ一つ箱を開けていきます。
備前の宝瓶、素朴な焼締の湯呑、名のない陶磁器。正直に言えば、数はあっても評価が難しい物が多いのが現状です。

「親方、これは正直、まとめての評価になりますねぇ」
「だろう? それでもいいんだ。年末の小遣いになれば御の字だよ」
こういう言葉が出る人は、
無理を言わないんです。
だからこちらも、出来る範囲で誠実に応えたくなる、
そんな人柄が長い付き合いに至る一番の要因です。
木箱の底から現れた“別格”の酒器
そんな中、一つの桐箱を開けた瞬間、私は思わず声を漏らしました。
「……ああ、これは」
「分かる?」
「ええ、井上萬二ですね」
白磁の冴え、薄造りの品格。
人間国宝・井上萬二 の酒器でした。

「若い頃、無理して買ったんだよ。いい物は、持ってるだけで背筋が伸びるだろ?」
親方は、少し照れたように笑います。
数が多く、評価が伸びにくい中で、
この一点だけは、はっきりと価値がありました。
「親方、これは頑張らせてください」
「そう言われると、頼んで良かったと思うよ」
値段よりも「ちゃんと見てもらえたか」
最終的には、備前の宝瓶、陶磁器類はまとめて評価。
そして井上萬二の酒器は、
きちんと単品で査定。
「全部でこの金額になります」
金額を告げると、親方はしばらく黙ってから言いました。
「十分だよ。ちゃんと見てくれた、それが一番だ」
私は何度もこういう場面に立ち会ってきましたが、結局のところ、お客様が求めているのは高価よりも、納得なのだと思います。
「これで年越しの酒が、少し旨くなるな」
「それは何よりです」
年の瀬に、物が次へ渡っていくということ
物というのは、不思議なもので、役目を終えると、次の持ち主を待つようになります。
長年大切にされてきた器たちも、またどこかで、誰かの手に渡っていくでしょう。
「また何かあったら、頼むよ」
「こちらこそ、いつでも」
南長崎の路地を歩きながら、私は今年もこの仕事を続けてこられたことに、静かに感謝していました。
鑑定士よりひと言
数が多く、値段がつきにくい物でも、中に“本物”が混じっていることは少なくありません。
処分を急ぐ前に、
一度、きちんと目を通させてください。
物の価値だけでなく、その人が過ごしてきた時間 も含めて、私は拝見しています。







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