鬼怒川が その名の通り 牙をむき

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昼過ぎの雨の甲州街道沿いの、渋谷区幡ヶ谷、余り良い思い出の無いところです。
呼んで頂いた、M様、着物と骨董品が有るという事で、冷たい雨の中、階段で2階のお部屋にお邪魔をし、思った通りの着物、焼物を前にして、今日この頃、買取の難しくなった物達の説明を始めました。
中々、うんと言ってくれません。引越されて不用な物を処分したいと、次から次へと、私には不要な物ばかり、奥から出て来ます。
私の頭は先程から、仕方なく路上に停めた車を気にしてます。
ミンクの毛皮が出たのを機会に、「ちょっと車見て来ます。」
冷たく降る雨を通して見える、私のフロントグラスに貼られた無情の黄色いステッカー。久しぶりにやられました。ほんの一分違いでした。
お部屋に戻り、すっかりやる気の無い私に、M様、「これ買えなかったらあげるわよ。」と頂いたのが此の琉球ガラスのロックグラス。
有りがたく頂く事にしました。
ちょうどグラスを割ったばかりです。
何と無く買いたくないミンク、焼物にお金を払い、琉球グラスを抱え雨に打たれながら、車に戻り、エンジンを掛けテレビの画面を見ました。
時間はちょうど午後の2時。
鬼怒川の堤防が決壊してました。
何処を回しても同じ画面。
暫くは、目の前の、そこいらのドラマをしのぐ、自然の猛威から目を離せんでした。無情に流れる家屋に車。必死に縋る人の影。

先程嘆いた、足元に転がる、駐禁の黄色いステッカー。
先程の憤りは消えてました。自分の被害の微細さに。

昼間頂いた琉球ガラスで焼酎のロックを飲んでます。

琉球ガラスで飲む芋焼酎

琉球ガラスで飲む芋焼酎

テレビには今日の午後の情景が流れてます。
あの暑かった夏からひと月も経たぬうちに、目の前に広がる暗い画面。
この頃の様々な自然の異変に思いが行きます。
人間と自然の力比べを見ているようで。

今日の一句

鬼怒川が
その名の通り
牙をむき

お粗末でした。